ZIPANG-6 TOKIO 2020 全国の姥神像行脚(その40)それぞれの地域の姥神信仰形態は立山が姥神信仰の中心か ・・・【寄稿文】廣谷知行


~立山が姥神信仰の中心か~

 

立山の布橋灌頂会


立山の布橋灌頂会(遠景)


これまで姥神をいろいろ紹介してきましたが、状況による歴史の古さなどから言って私は立山の姥神信仰が中心だったと思っています。さらにまだまだ確証はありませんが、全国的に広く知られる地獄信仰の奪衣婆についても、

・奪衣婆は平安時代に日本で創作された。

・奪衣婆は中国の書物をもとに、日本で地獄信仰を伝えるための書物に加えられた。

・立山に地獄があるという記述は平安時代の作品にすでに見られる。

・立山の姥神信仰は、南北朝時代の像があることから、これより古くからあると考えられる。→平安時代からあったと仮定。


などの理由により私は、立山の地獄をモデルに日本の地獄信仰がかたち創られたため、立山の姥神信仰をモデルに奪衣婆が創作されたのではないかと推測しています。


【分類1】姥神の祀り方


立山芦峅寺閻魔堂にある姥神像


さて、その10でも紹介しましたが、立山では、布橋灌頂会の儀式において、姥神像は秘仏であり、本尊として拝されていました。さらにその場所は女人禁制地との境界となっています。つまり本尊と境界のしるしの両方の意味を持っていたと考えられます。


新潟県出湯温泉の優婆堂に奉納される木彫りの姥神像


これを踏まえて全国の姥神信仰を見てみると、例えば新潟出湯温泉の姥神は秘仏で本尊として祀られています。同じように福島県の関脇、青森県の優婆寺なども本尊としての意味合いが強いです。秘仏としているところが多いのも特徴と言えます。


東京都正受院の咳の婆に、人間以外も願掛けに来る錦絵。当時の人気の高さがわかります。



江戸期に願掛けで人気のあった咳の婆、お竹大日如来、翁稲荷の錦絵


京周辺の咳の姥神についても同じような祀り方と言えます。これらはその11~19で紹介しています。


山形県岩根沢神社にある湯殿山参拝の奉納画


 

これに対し山形県の湯殿山では、境界のしるしとして祀られていました。湯殿山の影響を受けている茨木県日立市の御岩神社、栃木県の那須岳や男体山なども同じです。これらの場所の近くに祀られたものについても、程度がありますが境界としての意味が強い祀り方となっていると考えられます。これらはその1~9で紹介しています。

ここから祀り方については大きく、

① 本尊・境界の両方型

② 本尊型

③ 境界型

の三つに分類できるかと考えています。

おそらく立山の信仰が伝わった時、湯殿山では境界の意味を、出湯では本尊としての意味をそれぞれ強く影響されたのだと思われます。さらにそれぞれ出湯、湯殿山の影響を受けた各系列で同じような祀り方になっていますので、①は立山型、②は出湯型、③は湯殿山型と言い換えることもできるかと思います。


【分類2】姥神像を祀る対象

 次に祀る対象としては、呼び名はいろいろありますが、立山のようにおんば様、優婆様、そして姥神様と呼称し、姥神として祀っている場合がまずあります。

この例は先の本尊型では新潟の出湯温泉や福島県関脇、青森県優婆寺、境界型については山形の湯殿山や栃木県の那須岳、男体山などが姥神として祀っていると考えられます。

そして地獄の奪衣婆として祀っている場合があります。これは本尊型と言える群馬県甘楽町の姥堂、境界型と言える同じ群馬県各地の墓地や寺院の入り口に祀られたものなどがこれにあたります。

これらはその31~39で紹介しているものになります。他にも、福島県桧枝岐村の橋場のばんばのように橋姫、滋賀県月心寺のように小野小町、新潟県弥彦村のヤサブロバサ(妙多羅天女)などのように他の信仰と習合して祀られる場合があります。

これらはその21~29で紹介しているものになります。これらの祀る対象を大きく分けると、

① 姥神型

② 奪衣婆型

③ その他型

の3つに分類できるかと考えています。

もちろんそれぞれの型が複雑に絡みあって祀られている場合もあり簡単にはいきませんが、それぞれの特色が強いもので分けてみると、山形では境界・姥神型が多く、群馬では奪衣婆型が多いなど地域毎の特色があることがわかります。

次回からはこの分類をあてはめながら紹介していきたいと思います。


次回に続く・・・


寄稿文
廣谷知行(ひろたに ともゆき)
姥神信仰研究家



※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。
発行元責任者 鎹八咫烏(ZIPANG TOKIO 2020 編集局)



アーカイブ リンク記事をご覧ください。


ZIPANG-3 TOKIO 2020 全国の姥神像行脚(その11)内密にせよ 「 富山城主だった佐々成政が寄進した  最澄作の大姥尊像 」・・・   【寄稿文】廣谷知行
https://tokyo2020-3.themedia.jp/posts/7170547


ZIPANG-3 TOKIO 2020 全国の姥神像行脚(その12)33年に一度のご開帳「 新潟県十日町市 天台宗両澤山大慶院の大日姥婆尊」・・・【寄稿文】廣谷知行
https://tokyo2020-4.themedia.jp/posts/7356899


ZIPANG-4 TOKIO 2020 全国の姥神像行脚(その13)新潟五頭山麓 羽黒地区『優婆堂』優婆尊縁起によると…【寄稿文】廣谷知行
https://tokyo2020-4.themedia.jp/posts/7504639



※現在、1700件余の記事掲載、下記のサイトからご覧ください。


最新の記事をご覧いただけます。

ZIPANG-6 TOKIO 2020 (VOL-6)
https://tokyo2020-6.themedia.jp/


最近の記事をご覧いただけます。

ZIPANG-5 TOKIO 2020 (VOL-5)
https://tokyo2020-5.themedia.jp/


250件ほどの記事をご覧いただけます。

ZIPANG-4 TOKIO 2020 (VOL-4)
https://tokyo2020-4.themedia.jp/


235件ほどの掲載記事をご覧いただけます。

ZIPANG-3 TOKIO 2020 (VOL-3)
https://tokyo2020-3.themedia.jp/


200件ほどの掲載記事をご覧いただけます。

ZIPANG-2 TOKIO 2020(VOL-2)
https://tokyo2020-2.themedia.jp/


615件ほどの掲載記事をご覧いただけます。

ZIPANG TOKIO 2020 (VOL-1)
https://tokyo2020-summer.themedia.jp/

ZIPANG-6 TOKIO 2020

これまでの、日本の精神文化と国土の美しさについて再発見に加えて その1. 全世界との情報の共有化 その2. 偏り、格差のないローカリティの尊重! その3. 美しきものへの学び、尊敬、関心を高める教育と推進

0コメント

  • 1000 / 1000