ZIPANG-6 TOKIO 2020 色彩デザイン実践講座 事例3 くらしのインフラストラクチャーの デザイン・色彩 ー1【寄稿文】林 英光 


景観デザインの原則

1:風土・伝統を活かし 未来をつくる。

2:白・黒・グレー・自然素材色が日本の風景の基本である。

3:地域全体を見渡し、風土伝統と構造と機能性から景観のあるべき姿をイメージする。

デザイン・色彩の原則は、野山には植物の色より鮮やかなグリーン系を止める。
海・水辺には空の青、水の青より鮮やかなブルー系は使わない。理由は海や山の自然の風景を阻害してはならない。余分な色彩は風景の美を阻害するので不要。

人・車・舟など動くものはその範囲ではない。
地域全体を見渡し、何が大事か、何を目指すかべきかを前向きに議論し、現代の技術と素材を用い、誇りをもって優れた伝統を引き継ぎ、新たな取り組みをすることが国土と地域の美しい未来を創る。


カラーコンセプト 事例ー1

 国宝犬山城と調和し引き立てる「墨色」の新犬山橋

地域のデザインは最も大切な風土と、シンボルとなるものから始まる。
国宝犬山城と同じく色彩は「墨色」の新犬山橋とした。

大正時代の薄緑色の犬山橋の位置に合わせながらも、城の構造に近いモダンな造形とした。
大正ロマン風の旧橋の薄緑にしたい向きもあったが、室町時代の優れた伝統に調和させることが第一であり、市域全体の景観も、根なしバラックデザイン建築ではなく、優れた伝統の色彩「白・黒・グレー・自然素材色」を、現代の素材と技術で活かし、誇りを持って未来の街並みを造ろう。


鵜飼舟で橋の下をくぐると400年古の風景が蘇る


旧橋との特徴の差を「墨色」で堂々とした和のイメージに


橋梁上部も墨色と無彩色


篝火台の形の親柱も戦国の風情で城を引き立てる


カラーコンセプト事例ー2

インフラは無彩色と1色の同系色が穏やかな風景になる

コンクリート色と黄橙系の色彩の小里川ダム 


ダム堤体上部の照明は高欄と道路面と間隔を合わせ外部に光を漏らさない穏やかな夜景に


この小里川(おりがわ)ダムは、里山ダムとして計画された代表的なプロジェクトである。
ダムの天端は一般の車両も通行出来、また躯体内部にはギャラリーも、下流を見下ろす展望スペースもある。

大型構造物にある危険性を感じさせないよう、人の接する部分には丸みを持たせ、里山ダムらしく安心感と穏やかな景観を目指した。

色彩は堤体のコンクリート色と、車道のアスファルト、横断歩道と内部への出入り口は「黄橙色」で、高欄内側壁のブラウン色と歩道面の砂色のタイルも黄橙の同系色で風景は調和して見える。この構成は夜間の照明にも連動し、工事用の台から見下ろすことができる。


またこのあたりには古代人の巨石文化である磐座があり、工事現場から出た巨石で、ダムの四方の親柱を兼ね「四神相応」を表した。


構造体を活かす造形と同系色で、力強く優しい姿の里山ダム 


全体を丸みのある形と色彩で穏やかな景観に


 天端の歩道 高欄 照明の位置での心よい爽やかなリズム感   


竣工直前の景観の問題点もみえる


右堤体斜面途中の2つある踊り場から下流展望が出来る。
丘の上にある建設用ケーブルのコンクリート台は展望台に。左は湖面管理用の舟をおろす施設(薄ピンク色はダム堤体の色彩方針と少々合わない)、下のグリーンのフェンスは仮設であり撤去。

トータルデザインの難しさはほんの少しの不調和で合格点に至らない。形も色彩も原則に沿ってシンプルに整理することが大切。我が国では隣り合う周辺が縦割り管轄で異なるが、照明灯や交通サインなども位置と形態を交渉で全体調和を進めよう。 


 カラーコンセプト事例ー3

無彩色はインフラ景観の王道である。
久澄橋(きゅうちょうはし)の トータルデザイン 白一色ではあるが橋梁構造の新たな工夫と、明暗の変化で繊細な姿が出来た。

白黒グレー無彩色は天候と照明で美しく変化する 単弦ローゼ橋は構造体が非常にゴツく、リベットも目立つので、橋梁の形をスリムにすることがデザインコンセプトである。

また単弦ローゼは吊り材が垂直の縦構造であるのに対し、吊り材をアーチに対し直角にした提案は、つい構造まで提案したくなる委員長兼デザイナーの癖で、二連の橋であるので両掌を広げた指先にアーチをかけた形状は、アーチに対し吊り材を直角に取り付けることを提案し、全体に動きとリズム感を表現出来た。

またアーチは巨大な鉄の四角でリベットが各所に目立つが、ここではアーチ断面を六角形にし、吊り材も工夫した。

この構造は初めての試みで心配もあったが、県の担当者の努力で実現出来た。親柱は東アジアの理想の都市デザインの思想の四神相応を四季の色の石で表した。 


橋梁構造の新たな試みと円弧の造形で形状のスリム化を実現


模型で全体像の検討


冬の矢作川河川敷との優しい姿が実現した


また橋梁全体の要素もアーチの形状を全てに活かし、スリムにという課題ではアーチの斜めにした面に夜間照明があたり、夜景も白鳥の翼を広げたスリムな姿になった。 


雨天で路面に映るアーチの斜め面が光りスリムに優しく見える


アーチの円弧を細部まで全ての要素に、トータルデザイン完成 キャプション 


橋の未来と安全を祈念して理想的な環境を表す「四神相応」の親柱


前号の復習

ZIPANG-5 TOKIO 2020
色彩デザイン実践講座 事例2 カラフルデザイン・色パレットの勧め【寄稿文】林 英光

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三河地域の寄稿文

ZIPANG-5 TOKIO 2020 ~ 早春譜から惜春譜へ ~ アフターコロナへのお膳立て 色彩環境 ー1 ・・・【寄稿文】林 英光

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【寄稿文】林 英光

環境ディレクター
愛知県立芸術大学名誉教授



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ZIPANG-6 TOKIO 2020

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